この記事では、その内容や利用方法などを紹介していきます。

1、住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入または増改築などをした場合に、税金の控除が受けられる制度です。一般的には住宅ローン控除もしくは住宅ローン減税と呼ばれていますが、正式には「住宅借入金等特別控除」という名の制度です。

2、住宅ローン控除で「減税される額」

住宅ローン控除による減税額は、年末時点の住宅ローン残高の1%です。例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円の場合、その1%である30万円が控除金額となり、その分の税金が戻ってきます。
控除額の上限は年間40万円までとなりますが、新築または未使用の「認定長期優良住宅※1」や「認定低炭素住宅※2」の場合は、年間最大50万円の控除を受けることができます。
ただし、非課税とされている中古住宅の個人間売買や、消費税5%適用時期に購入した場合は、住宅ローン控除額は年間最大20万円となります。

※1 「認定長期優良住宅」とは、長期にわたり良好な状態で使用するための構造および設備を有しており、基準に適合すると認定された優良な住宅のことです。詳しくは 国土交通省HP(長期優良住宅のページ) で確認することができます。

※2 「認定低炭素住宅」とは、地球温暖化で問題視されている二酸化炭素の排出量が少なくなるように建設されており、一定の基準に適合すると認定された住宅のことです。詳しくは、国土交通省(低炭素建築物認定制度パンフレット)を参考にしてください。

3、住宅ローン控除の「受けられる期間と期限」

控除を受けることができる期間は10年です。ただし、消費税が8%から10%に引上げられた2019(令和元)年10月1日以降は、消費意欲の減退防止策の一環として、適用期間が最長10年から13年へと特例として延長されています。当初の入居時期の条件は、2020年12月末まででしたが、2年延長されたことで2022年12月末までの入居が対象となります。ただし、注文住宅は、2021年9月末までの契約、分譲住宅や増改築等は2021年11月末までの契約という期限の設定がされています。

4、住宅ローン控除の「適応期間が最長13年間の場合」

控除期間の1年目から10年目までは、住宅ローン年末残高の1%が減税額になりますが、11年目から13年目までは、次のいずれか小さいほうの金額が適用されます。
①住宅ローン年末残高(上限4,000万円、長期優良住宅等は5,000万円)×1%
②建物購入金額(上限4,000万円、長期優良住宅等は5,000万円)×2%÷3

たとえば、下記のようなケースだと❶が適用されます。

❶住宅ローン年末残高2,000万円×1%=20万円

❷建物価格3,300万円×2%÷3=22万円

5、住宅ローン控除を「受けるための条件」

住宅ローン控除を受けるには、適用要件を満たす必要があります。適用要件は、「新築」「中古」「リフォーム・増改築等」に分かれています。
※100万円以上の工事(増築・修繕・省エネ・バリアフリー改修など)も、住宅ローン控除の対象となります。ただし、省エネ・バリアフリー改修の場合は、別のリフォーム減税(特定増改築等住宅借入金等特別控除)の方がメリットのある場合があり、重複利用ができませんので事前に確認が必要です。

「新築」の条件

⑴ 住宅取得日から6ヶ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き居住していること
⑵ 住宅ローン控除を受ける年の年間合計所得金額が3,000万円以下であること
⑶ 住宅の床面積(登記面積)が50㎡以上で、床面積の1/2以上が居住用(年間合計所得が1,000万円以下だと床面積40㎡以上に緩和)であること
⑷ 民間の金融機関や独立行政法人住宅金融支援機構などの住宅ローン等を利用していること

⑸ 住宅ローン等の返済期間が10年以上で、分割での返済であること
⑹ 居住した年を合わせた5年の間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと

「中古」の条件

上記「新築」の条件⑴~⑹に加えて、

⑴ 建築後使用されたことがある家屋であること

⑵ 次のいずれかに該当する住宅であること

Ⓐ 家屋が建築された日から取得日までの期間が20年(マンション等の耐火建築物は25年)以内であること

※「耐火建築物」とは、建物謄本に記載された家屋の構造のうち、建物の主たる部分の構成材料が、石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含まない)、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいう。
Ⓑ 取得日前の2年以内に、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準に適合する建物であると証明された耐震住宅であること
Ⓒ ⒶとⒷ以外の家屋(要耐震改修住宅)のうち、取得日までに耐震改修を行うことについて申請し、かつ、居住日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することが証明されたもの

⑶ 取得時および取得後に、生計を一にする親族や特別な関係のある人からの取得ではないこと

⑷ 贈与による取得ではないこと

リフォーム・増改築の場合

上記①「新築」の条件⑴~⑹に加えて、

⑴ 自己の所有であり、自己が居住する家屋の増改築等であること
⑵ 次のいずれかに該当する工事であること
Ⓐ増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替えの工事
Ⓑ区分所有建物の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
Ⓒ家屋のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
Ⓓ法令上の構造規定又は地震に対する安全基準に適合させるための修繕又は模様替えの工事
Ⓔ一定のバリアフリー改修工事
Ⓕ一定の省エネ改修工事
⑶工事費用(増改築等の補助金等の交付を受ける場合はその額を差し引いた額)が100万円を超えるもので、自己の居住部分の工事費用が、総額の2分の1以上であること 

6、住宅ローン控除が「50㎡から40㎡に緩和」

2021年(令和3年度)税制改正で、住宅の床面積要件が緩和されたことで、控除対象が「50㎡以上」から「40㎡以上」になりました。(40㎡以上50㎡未満については、合計所得金額1,000万円以下の方が対象となります。)

そのことにより、単身者やDINKSなどで「住宅の広さが40㎡(1LDK・2LDK)くらいで十分」だと考える方もローン控除の対象になるので、住宅購入を検討する後押しになることでしょう。

尚、住宅ローン控除が受けられる床面積は登記簿上の面積である「内法(うちのり)面積」で測ったもので判断されます。通常、広告チラシなどの床面積は、壁の中心線で測った「壁芯(へきしん)面積」で記載されており、「内法面積」より少し小さい面積です。ジャスト40m2もしくは50m2の物件の場合は、事前に登記簿の面積(内法面積)を確認しておきましょう。

7、住宅ローン控除で「税金が戻ってくる流れ・手続き」

会社員などの給与所得者の場合は、源泉徴収によって毎月の給与から所得税・住民性が天引きされています。住宅ローン控除は、住宅を購入した人が申告することによって還付されるため、購入者自身で手続きをする必要があります。

一般的な住宅ローン控除の手続きは、1年目の確定申告時に住宅ローン控除申請を含めた申告を行い、2年目以降は年末調整時の手続きによって行います。その後、源泉徴収で払いすぎた税金分の還付が受けられるという仕組みになっています。

※通常の確定申告期間は毎年2月16日から3月15日ですが、住宅ローン控除の還付申告だけであれば、居住開始日の翌年の1月1日から5年間いつでも申告可能です。

個人事業主の場合は、確定申告の手続きの時点で住宅ローン控除が適用され、所得税額が算出されるので、納める税額が少なくなる仕組みです。

また、所得税だけで控除額の全てを差し引きできない場合は、住民税から引かれることになります。住民税を徴収する市区町村が、税務署や勤務先から住宅ローン控除の情報が入るため、この場合は特別な手続きの必要がなく、税金の還付を受けることができます。
なお、所得税は申告した年の金額から、住民税は翌年に納める住民税から控除されます。

ご不明な点などがあれば、最寄りの税務署に問い合わせることで説明して頂けます。毎年の確定申告期間は税務署が非常に混雑するので、時期を見計らって行うことも考えておきましょう。

8、住宅ローン控除で「減税できる所得税・住民税の額」

前述の通り、住宅ローン控除額の上限は年間40万円までとなり、新築または未使用の「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」の場合は、年間最大50万円の控除を受けることができます。

また、所得税から控除額が差し引きできなかった分は、住民税からも控除できます。

住民税から控除できる額は、下記のそれぞれ①②のいずれか少ないほうの額が適用されます。

<2014(平成26)年4月~2021(令和3)年12月までに入居>
① 前年分の所得税の課税総所得金額の7%(最高13万6,500円)
② 前年分の住宅ローン控除可能額のうち、所得税から控除しきれなかった額
<2014(平成26)年3月までに入居>
① 前年分の所得税の課税総所得金額の5%(最高9万7,500円)
② 前年分の住宅ローン控除可能額のうち、所得税から控除しきれなかった額

以下のケースを参考に、控除される税額がいくらになるか見てみましょう。

【令和2年に入居のケース】
・年末の住宅ローン残高→3,500万円 ・住宅ローン控除額→35万円
・所得税→10万円 ・住民税→15万円

この場合、所得税の10万円は全額差し引くことができます。残りの控除可能額は25万円となりますが、住民税15万円からすべてを差し引けるわけではありません。

住民税から差し引ける金額は13万6,500円が上限になっているため、1万3,500円が最終的に納める税額となります。

住宅ローン控除は、所得税・住民税の支払金額が多い人ほど減税される金額が大きくなる制度です。そのため、減税できる額が多くても、上記のケースのように、収入によっては控除を使い切れない可能性があります。特に住宅購入後に収入が減った場合などには住宅ローン控除分のすべてを使い切れないこともあります。

また、勤務形態がパートやアルバイトの方でも、住宅ローン控除を利用することはできます。ただし、年間所得が103万円以下の場合は、所得税が発生せず税金自体の支払いがないため、控除によって還付される税金はありません。

9、住宅ローン控除で「確定申告に必要なもの」

確定申告を行うための書類を事前に用意しておく必要があります。金融機関などから郵送で届くもの、インターネット等から自分で取得するものなどがあります。1つでも漏れがあると二度手間になるので、事前に必要書類を把握し、スムーズに申告が進められるように準備しておきましょう。

<申告に必要となる書類一覧>

①確定申告書A(第一表と第二表)
②住宅借入金等特別控除額の計算明細書
③源泉徴収票
④金融機関等からの住宅ローンの借入金残高証明書
⑤マイホーム(土地・建物)の登記簿謄本
⑥不動産売買契約書(もしくは工事請負契約書)の写し
⑦本人確認書類(ⒶまたはⒷ)の提示または写しを提出
 Ⓐマイナンバーカード

Ⓑマイナンバー通知カードまたはマイナンバーの記載がある住民票と

身元確認書類(運転免許証やパスポートなど)
⑧その他、耐震基準適合証明書、住宅性能評価書、長期優良住宅・低炭素住宅の認定通知書の写しなど

※①②は税務署か国税庁HP(申告手続・用紙)で取得することができます。③は入居した年のもので勤務先から発行されます。④は金融機関から送られてきます。⑤は法務局から取得できます。⑥は不動産会社・建築業者と交わした契約書類です。

※新型コロナウイルスの影響で、令和2年12月31日までに入居できなかった方は「入居時期に関する申告書兼証明書(控除期間13年間の特例措置用)」を国税庁HPで確認、もしくは各事業者にご相談ください。

10、住宅ローン控除を「夫婦や親族で受ける場合」

住宅ローンを夫婦で組む場合は「ペアローン」、夫婦や親族間で組む場合は「収入合算」というものがあります。

「ペアローン」は、夫婦2人共が住宅ローンを組むため、住宅ローン控除も2人で受けることができます。メリットとしては、高額な不動産を購入した際に、全体の控除額を多く利用できることです。デメリットに関しては、住宅ローン事務手数料が2人分になることや、申告作業も単純に倍になるということです。

「収入合算」は、夫婦(または親族)2人分の所得金額を合算するので、住宅ローンの借入額を増やすことができます。ただし、住宅ローンを組むのはどちらか1人なので、住宅ローン控除は契約者である1人だけしか受けることができません。

11、住宅ローン控除の「まとめ」

住宅ローン控除は、マイホーム所有者の所得状況・入居時期・物件内容などによって、減税額に大きな差がでます。まずは自分の状況とローン控除の内容をしっかり把握して、利用の検討をするとよいでしょう。

たとえば、すでに他で所得税・住民税が減税されている場合は、住宅ローン控除を十分活用できないこともあるため、その辺の確認も必要です。 政府からの住宅取得に対しての支援策であるこの「住宅ローン控除」を使わない手はありません。また、コロナ影響により落ち込んだ経済の回復を図ることを目的として、住宅ローン減税の延長・緩和もありましたので、その内容を今一度確認していただき最大限に活用してください。

令和3年9月1日時点の法令に基づいて記載しております。